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?Bこうした問題については、民法の一般原則に従えば、表見代理(民法109、110条等)がどの程度認められるかという論点が出てくる。この点に関しては、表見代理は意思表示の相手方が行為者を代理人と信頼するという事情つまり権限ありと信ずべき正当な理由が存在することが必要であるが、この点についても、本人が何ら帰責事由がない場合であっても、契約の成立を認めるか否か、どのような場合について契約の成立を認めている根拠があるのかを検討していく必要がある。

 

(参考)

民法第109条(代理権授与の表示による表見代理)

…第三者に対して代理権を与えたる旨を表示したる者は其代理権の範囲内に於て其他人と第三者との間に為したる行為に付き其責に任ず。

民法第110条(権限踰越による表見代理)

…代理人が兵権限外の行為を為したる場合に於いて第三者が兵権限ありと信ずべき正当な理由を有せしときは前条の規定を準用す。

 

?C上記の?Aと?Bの問題を解決するためには、電子商取引における本人確認が、現在ある技術でどのような本人確認手法をとっていれば相手方が保護されるのか、それは合理的なコストの範囲内で可能なのか、無権代理や表権代理による取引の行為について誰にどのような考え方で責任を負担させるかなどを整理していく必要がある。

 

・技術的には、対面販売で用いられてきた従来の署名(筆跡)、人相、印鑑といった要素による本人の確認に代わって、電子商取引用に、ID、暗証番号、指紋や声紋等を活用した本人確認システム、暗号(非対称鍵方式or共通鍵方式)を活用した本人確認システム等が考えられる。

 

・制度的には、責任負担の在り方について、上記のような本人確認の技術を組み込むことにより、これらの個人的情報を本人がある程度管理する責任を負担させることは妥当であると思われる。また、保険等のリスク負担の制度を実施することにより、責任負担の問題を解決することも可能であろう。

 

 

 

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